旭日 純米吟醸生原酒

 十旭日(じゅうじあさひ)という酒に出会いました。蔵は、出雲駅の北数百メートルの市街地にあり、商店街側に小売スペースもありました。店先に下がっている杉玉はまだ蒼々としていて、新酒ができて間がない事を語っています。殆ど予備知識なかったのですが、近所の蕎麦屋で呑んだ純米は私の好みでした。購入した酒は、山田錦を55%精米し、9号系酵母で醸した純米吟醸(H19BY)です。HPにある蔵元の挨拶には、『弊社の酒はコクのあるしっかりとした味わいと、後切れの良い喉越しが特長です。原料から吟味し酒本来の味はできるだけ残すという信念のもと、とことん品質にこだわった酒造りに徹しています。』つまり、私の好みの筈・・・。

 この酒の名は、最初に十字のマークがあって、十旭日と書いて、じゅうじあさひと読むようです。この十字のマークは、『切り竹矢筈十字』といって、能勢氏の家紋のようです。
 能勢氏というのは、戦国・安土・桃山から江戸時代までの戦乱の世に翻弄されながらも、頼次は能勢の地に執着し、あの大きなケヤキの木のある野間神社を復興し、能勢氏を再興。その間に法華経への信仰を篤くし、日乾上人に帰依し、広大な山屋敷を寄進し、それが眞如寺に・・・。上人は、妙見大菩薩法華宗の守護神とし、自ら彫刻した妙見大菩薩像を能勢領が一望できる妙見山の山頂に祀り(慶長八年:1603)、これが能勢妙見山の始まりだそうです。 矢筈十字は、能勢頼次が使用し始めたもので、現在では、能勢妙見山独自の紋章のようです。ただ、この能勢妙見山は、激しい弾圧によって深く潜行したキリスト教の身代わり?だから、この十字には隠れキリシタンの意味合いもあるのだとか・・・。話はそれましたが、旭日酒造の七代目(文造)が能勢の妙見山を篤く信仰し、妙見の紋章「矢筈(やはず)十字」をお守りとして大切にしていた事を受け、 十旭日が誕生したようです。


 
 冷で一口呑んだあと、燗しました。冷も旨いですが、燗すると更に旨い。よくできた純米酒の典型です。冷で呑むと、濃厚・芳醇な味わいですが、燗をするとバランス良くまとまって、ちょっと軽くなり、ふわっとした米の旨みを増してすっと喉を通りぬけます。旨い!