その昔父は、Nタクシーを偏愛し、何処にいっても可能な限りNタクシーを探していた。先日もう40年以上もNタクシーに乗車している患者さんが、急に父の話を始められた。京都の四条大橋で客待ちしていたら、ウロウロとNタクシーを探す父。父の顔を知る患者さんが声をかけると、上機嫌で乗車してきたと・・。たまたま忙しかったので、ゆっくり話はできなかったのだが、何故か突然、20年以上前に逝ってしまった父の話を懐かしそうにしてくださった。私も何度か聞いたことがあるのだが、祇園に遊びに行って、帰りが遅くなると、四条大橋で大阪行きの客待ちをしているNタクシーをひろったり、最初からNタクシーで行って、時間を待ち合わせてそのタクシーで帰るという贅沢な話を。短い、数分間の会話をきっかけに父の思い出が広がった一瞬だった。
 最後に、もう初診から6−7年になるその患者さんは、あなたがあの先生の息子さんですか・・・と。えっ今まで知らなかったの?