摂州倉垣 千石谷

 
秋鹿の新酒を「春出し」と呼ぶらしく、限定酒として、出回っています。急にほしくなって、車を能勢へ走らせました。箕面グリーンロードのおかげで、能勢がぐっと近くなったのです。蔵までは、一時間かかりません。ただ、蔵には人影もなく、酒の販売もしていないようで、近くをうろついていると、元々酒蔵だった嶋田商店という店をみつけました。さすがに能勢の店なので、秋鹿の品揃いはなかなかです。当然「春出し」もありました。ただ、いざ買おうと思ったその時、その隣に「千石谷」を見つけてしまいました。「春出し」は、新酒なので、少しピリピリした感じが残るフレッシュな酒・・・の筈。でも、隣の千石谷は、1年寝かして、味がのっている筈で、僕にとっては燗向きの酒。気がつけば、千石谷を抱えていました。
 ラベルには、こんな文句が・・・
蔵元秋鹿酒造のある地、摂州能勢の倉垣を、かつて人々は「倉垣千石谷」と呼んだ。はるか昔から、人が住みつき、暮らしを営んだとはいえ、さほど米作りに適した所とはいえないこの能勢の地であれば、自然との知恵の比べ合い、根気の尽くし合いは、いかに激しかったことか。星をいただいて田に出、星を背負って帰路につく村人たちの奮励の甲斐あって、やがて倉垣で、千石の米を産するようになったとき、当時の殿様は、「天晴、この地を千石谷と名付けよ」と誉めたたえたとか。しかし、いつからか千石谷と呼ばれなくなり、平成の今日、残っているのは言い伝えばかり。察するに、その後、収穫石高が上がり、千石谷といその名を残す意味がなくなったためだろう。ここに能勢の大地を営々と耕す人々の、とどまるところのない果敢な前進ぶりを見る思いがする。千石に満足せず、二千石、三千石と追い求める倉垣の人々のひたむきさは、酒づくりに対する私共の心意気と同じである。だからこそ、この酒に「千石谷」と名づけることによって、倉垣の人々のひたむきさを私共の心に刻みつけたい。倉垣の人々の精進を、私共の精進として、酒づくりの探求心を、さらにさらに、燃やしたい。そんな思いを込めて、この酒を醸したしだいである。

 谷淵杜氏が、山田錦の55%精米で、901号酵母を使って醸した平成19年度の酒です。1年以上寝かしています。山田錦の50-60%精米で9号系酵母。このもっとも好きなスペックは鷹勇や神亀でも味わいましたが、谷淵氏はどう料理するのか・・・・。果して・・・美味い。最高の燗酒に仕上がっています。花見には、これを水筒に入れて持っていきましょう。桜は、明日にも咲きそうです。