釣行

 黄砂さえなければ、抜けるような青空の筈の日曜日の朝、南淡路の海釣り公園へ出かけました。釣り好きのK氏(大阪有数の大きな眼科クリニック院長)の企画です。K氏と私とそれほど釣り好きでないO氏(大企業傘下の病院の眼科部長で神経眼科のスペシャリスト)の3名です。本当に久しぶりの釣りでしたが、以前は、何故かこの3人で釣行することが多かったのです。妙な取り合わせですが・・・今回は、我が家が、たまたま両氏の自宅の真ん中にあるという幸運に恵まれたので、私は、5時半の出発までタイムと公園を散歩しながら待っておりました。朝4時半から散歩する私も年老いたものです。
 時間に正確な昭和30年代前半生まれの3名は、定刻どおり出発しました。少し金回りが良くなり、乗り心地も良くなったO氏のボ社製SUVに乗り込みました。ガラッガラの阪神高速を飛ばし、垂水ジャンクションから明石海峡大橋、神戸淡路鳴門道を飛ぶように走り、西淡三原で降りました。四国街道を経由して福良の港へ。そこまでは普通の道なのですが、この辺りの海岸線は、際まで山が迫っているので、海釣り公園への道は最後にとんでもなく険しい道となります。マイカーじゃなくて良かった・・・。
 海釣り公園は、桟橋式釣り台ということですが、鉄とコンクリートで出来た巨大フロートです。フロートに乗ると左前方に大鳴門橋、右手に福良港が見えます。爽やかな風が吹き、まだ陽の光もやわらかく快適な状況です。釣りと言えば、眠たさ、寒さ、船の揺れ、トイレの我慢などと戦いの連続なのですが、ここは、暖かく、揺れることもなく、トイレもあるし、真水もあります。ビールもつまみもあるのです。後は、魚さえ釣れたら文句ないのです・・・。
  
 7時過ぎに、竿出し。ここは、サビキだけでいいと指示を受けていたのですが、持っていったは、竿2本だけで、仕掛けも餌もK氏が用意してくれました(深謝!)。竿出し直後、K氏の竿がバタバタ・・・・。彼の置きっぱなしの竿というのは、しばしば魚がかかります。本来サビキは、竿を定期的にあおりなかが、かごの中のアミ海老が漂う中をさびきの針も漂い、間違って魚が食いつくのを狙っている筈なので、放置された竿にはかからない筈なのに・・・、早速ばたついているのです。流石師匠!竿の置き方が違う!・・・と思ったらクサフグでした。すぐ捨てましたが・・・
 その後、しばらく、3名の出す竿には、全くアタリなし。潮が悪いそうです。潮が動かないと魚は食わんそうです。環境は快適なので、世間話でもしながら、時合を待つことに・・・。はたして、時合がやってきました。左の方から、鯵や鰯が上がっていきます。しばらくして、K氏の竿にもあたりが、そしてあろう事か、私を通り越して、左側のO氏がその辺に放置している竿がバタバタと・・・・。あげて見ると、鰯です。師匠格のK氏が一番多く釣るのは当然の事でしょう。同じような事をしていても、棚の取り方や竿のあおり方が微妙に違うのでしょう。ところが、左にいるO氏の放置竿が何回もバタバタ言うのです。O氏は、すぐにトラブルに見舞われ、もつれた糸をほぐしたり、根がかりして外れた籠を新しく取り付けたりと態々雑務をこしらえては、置き竿をするのです。すると、こいつがバタバタバタバタ・・・・・・。あげて見ると、また鰯。鯵。2度3度と同じ現象を見ているうちに、右隣にいる私に、ふっと殺意が芽生えました。このおっさん、後ろから蹴って、海の藻屑にしてやろうか・・・・。愛すべき家族のいる私は、理性で悪魔の囁きをなんとか抑え込むことに成功し、『さすが先生!凄い!ひょっとしら天才かもしれんで・・』などと言ったような言わなかったような・・・。その後、O氏は、『僕は才能だけで釣りしとる・・・』などとぬかしおったのです。蹴飛ばしといたら良かった・・・。その間、私の竿にかかったのは、ホンダワラ、死んだサンゴ、それらに付着している小さな生物と極小ハナカサゴ1尾だけ。悔しいので、写真で紹介しますね。かわいいでしょ。

 完全にやる気を喪失した私は、2本とも置き竿にしたまま、AJ氏のエッセイを読み出しました。何年か前、IH氏の小説にはまり、市販されている小説全部読破したことがありましたが、久しぶりに、はまりそうです。今まで、好きだった作家と全く異なるタイプで、元自衛官の体育会系小説家。まだエッセイだけなのですがとっても愉快です。この調子だと、市販されているもの全て購入することになりそうです・・・・・などとしばし現実逃避を図っていましたが、O氏に呼び戻され、場所を変えて竿を出しました。ただ、私だけが、釣れない。最後に、K氏O氏を真似て、フロートの中に開いている数m四方の穴から釣り糸を垂らしていました。すると鰯の群れが来たようで、皆どんどん鰯を上げます。勿論K氏もO氏も・・。
苦節5時間??ついに、私の竿にかかるアホな鰯が現れました。慈愛にあふれる鰯です。坊主必至の私の竿にかかるとは・・・。他にもアホな鰯は2尾いましたが、1尾はばらしてしまいました。釣りは釣れると面白いですが、釣れないと辛いものです。全く、勉強も準備もしないで、釣ろうという根性があかんとは思うのですが・・・・、また誘われたらどうしよう?いや、もう誘われんかな?